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弁護士に嘘をつかれたら — 虚偽説明・情報隠しへの対処法

弁護士マップ編集部
8分で読める

「絶対勝てます」という言葉を信じた結果

依頼者Aさんは、交通事故の損害賠償請求で弁護士に相談した。弁護士は「このケースなら絶対に500万円は取れます」と断言した。着手金30万円を支払い、半年後に届いた結果は示談金120万円。弁護士に問い詰めると「相手方の保険会社が想定以上に強硬だった」と言い訳された。Aさんが知りたかったのは、そもそも「絶対勝てます」という見通しに根拠があったのかどうかだ。

弁護士が依頼者に嘘をつく。信じたくない話だが、実際に起きている。弁護士マップの懲戒処分データベースに記録された2,176件の懲戒処分の中にも、虚偽説明や報告義務違反に関連する事例が複数存在する。本稿では、弁護士の「嘘」に遭遇した場合の見分け方と対処法を、法的根拠に基づいて解説する。

弁護士が嘘をつく4つのパターン

弁護士による虚偽説明は、おおむね以下の4類型に分類できる。

1. 見通しの過大説明

「絶対勝てます」「慰謝料は最低でも○○万円」「裁判になれば100%こちらが有利」。こうした断定的な表現で依頼を獲得し、結果が伴わないケースだ。法律の世界に「絶対」はない。相手方の主張、裁判官の判断、証拠の評価によって結果は変動する。それを知りながら断定する弁護士は、依頼者の期待を操作している。

2. 費用の過少申告

着手金を低く見せかけて受任し、後から追加費用を請求するパターンだ。「着手金20万円で大丈夫です」と言いながら、調停が不成立になれば「訴訟に移行するので追加着手金が30万円必要です」と告げる。こうした追加費用の可能性を事前に説明しないことは、意図的な情報隠蔽にあたる。弁護士費用の仕組みについては費用相場まとめで詳しく解説している。

3. 進捗の虚偽報告

「裁判所に書面を提出しました」と報告しておきながら、実際には提出していなかったケース。あるいは「相手方と交渉中です」と言いながら、何も動いていなかったケース。依頼者が裁判所や相手方に直接確認しない限り、発覚しにくい。この類型は悪質性が高く、懲戒処分に直結することが多い。

4. 不利な情報の隠蔽

依頼者にとって不都合な事実を伝えない行為だ。たとえば、相手方から和解案が届いているのに依頼者に知らせない、時効が迫っているのに告げない、敗訴の可能性が高いことを説明しない。弁護士にとって「伝えにくい情報」であっても、依頼者の判断に影響する情報を隠す行為は、信頼関係の根幹を揺るがす。

弁護士職務基本規程第29条が定める義務

弁護士職務基本規程第29条は、弁護士に対して「事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない」と義務づけている。さらに重要なのは、この条文が「依頼者に不利な結果となる見通し」についても説明義務があると解釈されている点だ。

つまり、弁護士は「勝てる見込み」だけでなく「負ける可能性」も誠実に伝えなければならない。これは単なるマナーではなく、弁護士としての法的義務だ。この義務に違反した場合、懲戒処分の対象となりうる。

「嘘」と「見解の相違」を見分ける方法

ここで注意が必要なのは、弁護士の説明が「結果的に外れた」ことと「嘘をついた」ことは異なるという点だ。この区別は極めて重要であり、混同すると適切な対応ができなくなる。

見解の相違(嘘ではないケース)

  • 弁護士が合理的な根拠に基づいて「勝訴の可能性が高い」と判断したが、裁判で予想外の証拠が出て敗訴した
  • 「慰謝料は200万円程度が相場」と説明したが、裁判官の判断で150万円になった
  • 「示談交渉で解決できる可能性がある」と説明したが、相手方が応じなかった

明らかな嘘(対処が必要なケース)

  • 裁判所に書面を提出していないのに「提出した」と報告した
  • 相手方から連絡が来ているのに「何も動きがない」と伝えた
  • 着手金とは別に確実に発生する費用を、意図的に説明しなかった
  • 過去の類似案件で敗訴が続いていることを知りながら「絶対勝てる」と断言した

見分けるポイントは「弁護士がその時点で知り得た事実に基づいて、合理的な判断をしていたかどうか」だ。判断が外れること自体は問題ではない。問題は、知っていたのに伝えなかった、あるいは根拠なく断定した場合だ。

虚偽が発覚した場合の対処ステップ

弁護士の説明が嘘であったと確信できる場合、以下の順序で対応する。感情的になるのは当然だが、まず実務的な対処を優先する。

ステップ1:証拠を保全する

まず、弁護士とのやり取りを全て記録・保存する。メール、LINEのスクリーンショット、電話の通話記録(日時・内容のメモでも可)、契約書、領収書、報告書。弁護士に不信感を抱いた時点から、全てのやり取りを文書化する習慣をつける。口頭での説明は「言った言わない」の問題になりやすいため、重要な説明は必ずメールで確認を取る。

ステップ2:弁護士本人に説明を求める

いきなり懲戒請求に踏み切るのではなく、まず弁護士本人に書面で説明を求める。「○月○日に○○と説明を受けましたが、実際には○○であることが判明しました。経緯の説明を求めます」という形式で、内容証明郵便で送付するのが確実だ。弁護士の回答内容自体が、後の手続きにおける重要な証拠となる。

ステップ3:弁護士会に相談する

弁護士本人の説明に納得できない場合、その弁護士が所属する弁護士会の「市民窓口」に相談する。弁護士会は所属弁護士に対する苦情を受け付け、必要に応じて調査を行う。相談は無料で、電話または来所で対応してもらえる。

ステップ4:懲戒請求を検討する

弁護士会への相談で解決しない場合、懲戒請求を行うことができる。懲戒請求は弁護士法第58条に基づき、「何人も」行うことができる。請求先は弁護士が所属する弁護士会で、書面で行う。ただし、懲戒請求は慎重に行うべきだ。根拠のない懲戒請求は逆に損害賠償の対象となりうる(最高裁平成19年判決)。

懲戒データが示す虚偽報告の実態

弁護士マップの懲戒処分データベースには2,176件の懲戒処分が記録されている(2026年4月時点)。この中には、依頼者への虚偽報告、預り金の不正使用、事件放置といった信頼を裏切る行為が多数含まれている。

懲戒処分の種類は、軽い順に「戒告」「業務停止(2年以内)」「退会命令」「除名」の4段階だ。虚偽報告の場合、初回であれば戒告または業務停止1〜3ヶ月が多いが、金銭的被害を伴う場合や常習的な場合は業務停止1年以上、あるいは退会命令に至ることもある。

依頼前に弁護士の懲戒歴を確認することは、虚偽説明の被害を未然に防ぐ最も効果的な手段だ。全国48,136名の弁護士データから検索し、懲戒処分の有無を確認してほしい。

予防策:嘘をつかれないための5つの習慣

最後に、弁護士の虚偽説明を予防するための具体的な習慣を提示する。

1. 重要な説明は必ず書面で求める

「勝訴の見込み」「費用の総額」「手続きのスケジュール」について、口頭の説明だけで終わらせない。「今のご説明をメールでいただけますか」と依頼するだけで、弁護士の態度は変わる。書面に残ることを嫌がる弁護士は、そもそも信頼できない。

2. セカンドオピニオンを取る

特に高額案件や複雑な案件では、別の弁護士にも意見を聞く。1件あたり5,000円〜10,000円の相談料で、最初の弁護士の説明が妥当かどうかを検証できる。これは医療でいうセカンドオピニオンと同じ発想だ。

3. 委任契約書を隅々まで読む

弁護士との委任契約書には、報酬の計算方法、追加費用の条件、解約時の精算方法が記載されている。これを読まずにサインする依頼者が多いが、後のトラブルの大半はここに原因がある。

4. 定期的な進捗報告を求める

月に1回、あるいは2週間に1回の頻度で、書面による進捗報告を求める。「現在の状況」「次のステップ」「想定スケジュール」の3点を報告してもらうだけで、事件放置や虚偽報告のリスクは大幅に下がる。

5. 口コミと懲戒データを事前にチェックする

依頼前に口コミ一覧で他の依頼者の体験を確認し、懲戒処分データベースで懲戒歴の有無を調べる。この二重チェックにかかる時間は10分程度だが、それが数十万円から数百万円の被害を防ぐ可能性がある。

信頼できる弁護士は、不利な情報こそ率直に伝える

弁護士選びで最も重要な判断基準のひとつは、「この弁護士は自分にとって不利な情報も正直に伝えてくれるか」だ。初回相談で「このケースは難しい面もあります」「費用対効果を考えると、訴訟以外の選択肢も検討すべきです」と率直に言える弁護士は、短期的には依頼を逃すかもしれないが、長期的には依頼者の信頼を得る。

甘い言葉で依頼を取りにくる弁護士ではなく、厳しい現実も伝えてくれる弁護士を選ぶ。そのための判断材料を、データと口コミの両面から提供するのが弁護士マップの役割だ。

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